不整脈部門

1.不整脈部門の紹介

不整脈部門紹介の最初の写真 一口に不整脈といっても、脈拍の速さにより速い(頻脈性)不整脈から遅い(徐脈性)不整脈まで、また症状により動悸、めまいを自覚する比較的軽いものから、めまい、失神、さらに突然死を生じる危険な不整脈まで様々です。最近の不整脈診療の進歩はめざましく、薬物療法に加えて、ペースメーカ、カテーテル治療(アブレーション)、植込み型除細動器、両心室ペーシングといった非薬物療法を駆使して、従来治らなかった不整脈を抑制・根治する、また突然死を予防することが可能となっています。そのため、循環器内科領域のなかでも虚血性心疾患、心不全と並んで3本柱のひとつにあげられる重要な領域になっています。私たち群馬大学不整脈グループは、高度な専門的な知識や十分な経験に基づいて、あらゆる不整脈に対し適切で最新の医療を提供しています。外来は、不整脈外来として月・木・金曜日の午前に、ペースメーカ・ICD外来として月曜日の午後に診療しています。お気軽にご相談下さい。

2.所属メンバー

当循環器内科の中では最も古く(約20年前)から活動している診療・研究グループです。大学病院を中心に活動し、関連病院にも教室員を派遣しています。
群馬大学:金古善明(准教授)、中島忠(講師)、入江忠信(助教)、飯塚貴士(医員)、田村峻太郎(医員)
高崎医療センター:太田昌樹、小林絋生
公立富岡総合病院:田村未央
館林厚生病院: 齊藤章宏

3.主な診療紹介

1)脳梗塞をおこす不整脈、心房細動の診療

 心房細動は、心臓に特別な疾患がなくとも加齢とともに起こりやすくなる最も多い不整脈の一つであり、脈の不整、動悸、頻脈感等の不快な胸部症状を伴うことに加えて、心(左房)内に血の塊(血栓)が形成され心臓から流出して、脳や四肢、腹部臓器の血管に詰まる塞栓症を生じることがあります。そのため、心房細動の診療は、今日の不整脈診療のなかで最も重要です。基本的な治療の方針は、① 心房細動の発生を抑制し正常な脈拍を保つ治療(リズム治療)か、心拍数のみコントロールする治療(レート治療)、及び ② 塞栓症予防のための抗凝固療法です。
心房細動が発作的に生じる発作性心房細動では、通常まず薬物(抗不整脈薬)によるリズム治療が行われます。薬物で停止しない時には、必要に応じて電気ショック(電気的除細動)にて停止させることもあります。しかし、心房細動の病巣は進行性で、通常経過とともに発作の頻度や持続時間が長くなったり、多種の抗不整脈薬でも発作の予防が困難となる例は少なくありません。最近ではカテーテル治療(後述する肺静脈隔離術)により高率に発作の抑制が可能となっています。一方、心房細動が慢性的に持続している持続性心房細動では、レート治療が中心となります。いずれの心房細動でも、塞栓症のリスク(75歳以上、高血圧、心不全、糖尿病、脳梗塞の既往)がある場合には、抗凝固療法が必要です。従来より汎用されていたワーファリンでは、ビタミンK摂取制限や他の薬剤との飲み合わせを考慮する必要がありましたが、最近これらの制限が必要ない新しい抗凝固薬が登場しています。

2)不整脈の根治治療 ~カテーテルアブレーション~

 カテーテルアブレーションとは、カテーテルという管を用いた不整脈の根治治療で、不整脈治療の主流になっている治療法です。血管を通して心臓までカテーテルを挿入し、副伝導路や頻拍起源といった不整脈の原因となる部位を高周波により焼灼することで不整脈を根治します。対象となる不整脈は、発作性上室性頻拍症(房室結節回帰性頻拍、房室回帰性頻拍、心房頻拍)、WPW症候群、心房細動、心房粗動、心室頻拍、心室性期外収縮です。1994年よりこの治療を開始し現在まで1000例以上の治療経験があります。心房細動治療は、5-7日の入院、その他は概ね2泊3日の短期入院にて治療を行っています。最近、心腔内エコー画像を融合させた最新鋭の三次元心臓マッピングシステム(CARTO3やEnsite system, Navix)を導入し、心房細動や難治性の心室頻拍に対してもアブレーション治療を積極的に実施し、良好な成績を得ています。

① 心房細動に対する肺静脈隔離術
心房細動は、左房に接続する肺静脈の起始部から発生する異常興奮が主な原因です。心房細動に対するアブレーションは、(両側拡大)肺静脈隔離術といって、心房中隔を穿刺して左房にカテーテルを挿入し、左右の肺静脈を2本ずつ囲むように肺静脈を囲むように焼灼して、異常興奮を肺静脈の中に閉じ込めることで心房細動を抑制します。 

両側拡大肺静脈隔離術を施行した左房の三次元マッピング画像

左肺静脈に留置してある2本のリング状カテーテルとアブレーションカテーテルのX線透視像

② 心室頻拍に対するアブレーション
 心室頻拍は、左右いずれかの心室筋の中に異常信号を発生させる病巣(起源)が形成されてしまった病気です。この頻拍に対するアブレーションでは、この起源の部位を探して心内腔から焼灼・破壊することで頻拍の根治を目指します。最近では、三次元マッピング装置により起源を視覚的に描出できるため、以前難治性であったこの頻拍の治療成績が格段に向上しました。さらに心内腔からの焼灼で根治されない例では、心臓の外側(心外膜側)からのアプローチを行うことも可能です。

三次元マッピングシステム(CARTOシステム)で視覚化された心室頻拍の起源

左室内腔から頻拍起源を焼灼しているアブレーションカテーテル(ABL)のX線透視像

3)突然死予防の治療 ~植込み型除細動器(ICD)~

心筋梗塞や心筋症といった器質的心疾患に伴う心室頻拍や心室細動の既往例は、将来心室頻拍・細動が再発し突然死の危険性が高いと考えられています。このような患者さんに対して突然死予防のために植え込み型除細動器を植え込みます。現在まで、200例以上の植え込み実績があります。

左鎖骨下部に植え込まれたICD

心室細動発作に対してICD(直流通電)が作動し、正常の脈拍に復しています。

4)心不全治療法としてのペースメーカ治療 ~心臓再同期治療(両室ペーシング)~

 心不全は心臓の収縮力が低下しているが主因ですが、これに加えて心臓の収縮がゆがみ(非同期収縮)が心機能をさらに低下させます。心房再同期療法とは、右室と左室(冠静脈洞)を同時にペーシングすることでこのゆがみを是正(再同期)し、心機能を改善するペースメーカによる心不全治療です。

術前には著明な心拡大を認めます

心臓再同期治療後には心拡大が軽減しています

4.過去4年間の診療実績


5.「群馬大学不整脈カンファレンス」

7年前より、①不整脈診療に携わる若手医師の教育、②地域医療への貢献を主な目的としたオープン形式のカンファレンスを1-2か月に1度開催し、症例検討、ミニレクチャーを行っています。

6.主要論文

1) Kaneko Y, Nakajima T, Irie T, Iizuka T, Tamura S, Kurabayashi M:Atrial and ventricular activation sequence after ventricular induction/entrainment pacing during fast-slow atrioventricular nodal reentrant tachycardia: new insight into the use of V-A-A-V for the differential diagnosis of supraventricular tachycardia. Heart Rhythm in press

2) Ota M, Kaneko Y, Nakajima T, Irie T, Iijima T, Saito A, Kurabayashi M: Detection of sequential activation of left atrium and coronary sinus musculature in the general population. J Arrhythm 2016;32;449–455.

3) Kaneko Y, Naito S, Okishige K, Morishima I, Tobiume T, Nakajima T, Irie T, Ota M, Iijima T, Iizuka T, Tamura M, Tamura S, Saito A, Igawa O, Kato R, Matsumoto K, Suzuki F, Kurabayashi M: Atypical fast-slow atrioventricular nodal reentrant tachycardia incorporating a “superior” slow pathway: a distinct supraventricular tachyarrhythmia. Circulation 2016;133:114-123.

4) Kaneko Y, Kato R, Nakahara S, Tobiume T, Morishima I, Tanaka K, Nakajima T, Irie T, Kusano FK, Kamakura S, Nagase T, Takayanagi K, Matsumoto K, Kurabayashi M: Characteristics and catheter ablation of focal atrial tachycardia originating from the interatrial septum. Heart Lung Circ 2015; 24:988-995.

5) Kaneko Y, Horie M, Niwano S, Kusano KF, Takatsuki S, Kurita T, Mitsuhashi T, Nakajima T, Irie T, Hasegawa K, Noda T, Kamakura S, Aizawa Y, Yasuoka R, Torigoe K, Suzuki H, Ohe T, Shimizu A, Fukuda K, Kurabayashi M, Aizawa Y: Electrical Storm in Patients with Brugada syndrome is Associated with Early Repolarization. Circ Arrhythmia Electrophysiol 2014;7:1122-1128.

6) Irie T, Kaneko Y, Nakajima T, Ota M, Iijima T, Tamura M, Iizuka T, Tamura S, Saito A, Kurabayashi M: Electro-anatomically estimated length of slow pathway in atrioventricular nodal reentrant tachycardia. Heart Vessels 2014;29:817–824.

7) Imai M, Nakajima T, Kaneko Y, Niwamae N, Irie T, Ota M, Iijima T, Tange S, Kurabayashi M. A novel KCNQ1 splicing mutation in patients with forme fruste LQT1 aggravated by hypokalemia. J Cardiol 2014: 64:121-126.

8) Kaneko Y, Nakajima T, Kurabayashi M: The morphology of unipolar potentials predicts the depth of activation foci. J Arrhythmia 2014:30; 292-299.

9) Nakajima T, Wu J, Kaneko Y, Ashihara T, Ohno S, Irie T, Ding WG, Matsuura H, K urabayashi M, Horie M. KCNE3 T4A as the genetic basis of Brugada-pattern electrocardiogram. Circ J. 2012;76:2763-72

10) Nakajima T, Kaneko Y, Irie T, Takahashi R, Kato T, Iijima T, Iso T, Kurabayashi M: Compound and digenic heterozygosity in desmosome genes as a cause of arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy in Japanese patients. Circ J 2012;76:737-43.

11) Saito A, Kaneko Y, Nakajima T, Irie T, Ota M, Kato T, Iijima T, Tamura M, Kobayashi H, Ito T, Manita M, Kurabayashi M: Detection of diastolic potentials around the mitral annulus of structurally normal human hearts. Int Heart J 2010; 51:394-398.

12) Kaneko Y, Nakajima T, Saito A, Irie T, Ota M, Kato T, Iijima T, Manita M, Ito T, Akiyama M, Taniguchi Y, Kurabayashi M: Discrimination between His-bundle and the Right Bundle Branch during Electrophysiologic Studies. Pacing Clin Electrophysiol 2009; 22:S72-S75.

13) Kaneko Y, Taniguchi Y, Nakajima T, Manita M, Ito T, Akiyama M, Kurabayashi M: Myocardial bundles with slow conduction properties are present on the left interventricular septal surface of normal human hearts. J Cardiovasc Electrophysiol 15:1010-8, 2004.

14) Akiyama M, Kaneko Y, Taniguchi Y, Nakajima T, Manita M, Ito T, Saito A, Kurabayashi M: Coronary sinus recordings of double potentials associated with retrograde conduction through left atrioventricular accessory pathways. J Cardiovasc Electrophysiol. 15:1371-6, 2004.

15) Manita M, Kaneko Y, Kurabayashi M, Yeh SJ, Wen MS, Wang CC, Lin FC, Wu D: Electrophysiological characteristics and radiofrequency ablation of accessory pathways with slow conductive properties. Circ J. 68:1152-9, 2004.

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